2010年2月14日 のDEKO-GANG

【紅ノ誓刻】とバレンタイン☆

10-02-14 小説

今日はいつもより、クラスの中が慌ただしい。女子は朝から教室を出たり入ったりしているし、呼ばれて教室から姿を消す男子も入れ替わり立ち替わりいる。
なんたって、今日はバレンタイン。そりゃ、はりきるよね。いつも静かな放課後の教室も今日は居残り組が多い。みんな楽しそうに、話したり、チョコを渡したりしている。

…私は…

ため息をつきながら立ち上がって、帰る準備をする。ゆっくりと教室を出ると、目の前に魁斗が居た。部活から帰ってきたのかな?魁斗も私に気が付いて、顔をあげる。

「あ、魁斗…」
そう、声をかけようとした瞬間。どどっと、女子が流れて込んできた。

「うにゃぁっっっ」
私は魁斗の元に行くどころか、廊下の壁に押しやられて壁とキスしそうになった。

「うううう…」
壁に拳を当ててなんとか、ファーストキスを守った私は、おでこをさすりながら、振り返る。たくさんの女の子達が魁斗を囲んでいるようで魁斗が見えない。同学年だけじゃなくて、先輩や後輩の姿まである。魁斗…今年もモテモテだなぁ…分かり切ってはいたけれど、今年も凄まじい…。

「あれ?由依何してんの?まさか、女子の群に追い出されたの?」
名前を呼ばれて振り返ると、親友の渚が笑いながら立っていた。

「渚…えーん。…我が心の友よ~」
私がすがりつくと、優しく頭を撫でながら

「あはは。天龍君今年も凄いわね~羨ましがる男子もいるけど、あれじゃ、ホワイトデーが大変じゃない。ご愁傷様って感じがするけど…」そう言う。

「うん。魁斗…いつもこの時期だけバイトしてるよ…」
「あははは。美形君も大変ね。」豪快に笑う渚。その手にはチョコが見えた。

「あれ?渚はまだあげてないの?」
私がそう聞くと、渚はチョコを指さしながら
「これは、あんたの分よ。ほら、どうぞ。」

顔がぱぁぁぁぁと明るくなる。
「わーい!渚のチョコ美味しいだよね~待ってたんだぁ!!!」

「まったく、由依は正直ね~あんたの顔見てるとこっちが恥ずかしくなるじゃない。」
私は両手をあげて万歳をしながらチョコを受け取った。

「由依は?あげないの?」

「え…私…?その…」
私は言葉に詰まった。渚に聞いて欲しいと思ったそのとき、また女子の歓喜の悲鳴があがった。
私も渚も顔を上げる。視線の先には弟の優目が見えた。

「うぁ!ちょっとまっ…!!!っげ!魁斗こんなことろにっ!」
優目の後ろにも女の子達が見える。

「やっと見つけた~!!!」
女の子たちに囲まれて、魁斗も優目も見えなくなった。

「優目もか~弟ながら…なんて言うか…モテるんだよね…」
ふと、渚の方を見ると渚の姿は無かった。

「なぎ…」
きょろきょろと回りを見ると、女の子の集団に混じっている。
「……」
私は、部外者のような気持ちでその場をあとにした。

【屋上】

「はぁ~」

大きなため息をついて、手すりに顔を埋めた。肩を落とす。ポケットから箱を取り出した。
箱を夕日にかざす。…かざされた箱は大きく潰れていた。
お料理とか…おかし作りとか苦手な私が…台所に立って一生懸命作ったチョコ。

でも…

見てくれも悪いし…見てくれぐらいならなんとかなるけど…
問題は、味。これを味見してくれた御爺は気絶しちゃった……。
それでも、今朝、必死に私を送り出しに玄関に出てきてくれた御爺。その御爺がこれまた必死な形相で、

「修行が足りんかっただけじゃ!由依!気にするでないぞ!ワシはもっと胃腸を強くする!!!決めたんじゃぁぁぁぁ!!!!」

と叫んでいた姿に涙が出た…御爺…ありがとう。励ましてくれて…でも私は100倍落ち込んで登校した。

私はその箱を見つめながら呟いた。

「……綾鷹…早く帰って来ないかな…戻ってきたらお料理のこと教えてもらおう……」

こんなチョコ、捨てることも出来たのだけれど…気持ちだけは込めて一生懸命作ったから、何だか手放せなくて…持ち歩いてしまっていたのだ。ハッキリ言ってこれは凶器……自分で言って悲しくなる。自己嫌悪する前に、よし!自分で処分しよう。
そう決めて、箱を開ける。箱の中から、形の悪いチョコが顔を出す。
それを見てまた落ち込んだ……

「来年は、ちゃんと魁斗にも優目にも先生にも渡せるもの作るぞ~!」
私は、自分に活を入れるためにそう叫んでいた。そして、チョコに手を伸ばしたとき…
後ろから綺麗な指が伸びてきた。そして、

「来年まで、待てないな……」

優しい声。その声の主はチョコを取って…
私は驚いて、慌てて振り向いた。そこには…魁斗と優目が立っていた。
二人は私のチョコを食べている。

「ありがとう…由依。」
魁斗が静かにそう言う。

「ばーか。何、落ち込んでるんだよ。姉貴が作ったものならどんなものでも食べてやるから、ちゃんと言えよな。」
優目もそう言いなが笑う。

「…魁斗…優目…」
凄く嬉しくて…ちょっと感動もして…涙が出た。目の前の二人に抱きつく。

「えへへ。嬉しい!ありがとう二人とも!大好き!」

私の腕の中で、魁斗と優目は優しく笑って…そして…

……………………

「あれ?魁斗?優目?」

 

気絶した。

「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」

 “完”